部員ブログ

2018-12-19
阿頼耶識(山口嵩弘)

「コンダクターってなんなんやろう…」

毎年、関学サッカー部は、2回生が学年ミーティングにて、コンダクターという役割のスタッフを決める。

ぼくも2年前に選手をやめてコンダクターになった。

この疑問にこの場を借りて、「コンダクターとは何か」について、ぼくなりの答えを述べたいと思う。

「コンダクター?ってなにするん?」
とサッカー部でない人から、よく聞かれることがある。
いつも決まって「学生コーチ兼トレーナーみたいな感じかなあ」と答える。まあ、間違ってはいない。事実、チームの練習を考えたり、メンバーを決めたり、テーピングを巻いたり、怪我人のリハビリを一緒に行ったりと、それはもう多岐に渡る。

だが、この答えにいつも違和感があった。
「果たして本当にそうか?」と。いや、そうやけど違うよね、と。

ぼくはコンダクターとは、一言で言うと「引き出す人」だと思っている。
それは、意識、感情、想い、そして能力さえも。

選手の課題に対して選手自身が克服するように働きかける。土足でその課題に踏み込むのではなく、選手自身が選手自身の力で、その課題と向き合うよう、強い覚悟を決められるようにすることだと考えている。

そしてチームと、学年と、サッカー部と、社会と、向き合っていく。そしてその過程で自分と向き合い続け、自分の新たな可能性すら引き出せるんだと思う。

そこから先は、もう無限に広がっている。なんでもできるし、何にだってなれる。自分の思うままやればいい。自分のしたいことを思い描いて覚悟を決めてやればいい。

「決断には51%のメリットと、49%のデメリットがある」というぼくの好きな言葉が意味するように、自分の道を自分で正解にしていけばいい。こんなことに気付かせてくれた。

ああ、なんてコンダクターは最高なんだろう。大学サッカーってこんなに素敵なんだろう。

とまあ、こんなええ風なこと言うてますけど、コンダクターになった当初は苦しかったんです。

プレーできないことがこんなに苦しいことだとは。なんで選手をやめたんだ。なんでプレーしていないんだ。選手としてピッチに立って、日本一になるんじゃなかったのか。おれって何者なんだ。何ができるんだ。何がしたいんだ。それでも最後は自分で決めたじゃないか。いや、でも…でも、でも、でも…。

毎晩のように考え、泣きじゃくり、泣き疲れて、いつの間にか寝る。それがずっと続いた。
心が折れそうになった。一緒にコンダクターになった、けんととこうだいが羨ましかった。キラキラして見えた。嫉妬だってした。
なんなら、嫌いだったかもしれない。

正直、地獄だった。目の前が真っ暗だった。
そう見せないようにグラウンドで振る舞うのも、ストレスだった。

でも、そんなとき光が射した。
隣を見れば必死に闘う仲間がいることに気がついた。

誰よりも早くグラウンドに来て、練習の準備をする。誰よりも遅くまでグラウンドに残って、自主練をする。誰よりも声を出してチームを引っ張っていく。たったひとつのプレーに対して熱くなり、意見し合い、時には喧嘩する。

そんなみんなにとっての、当たり前で、特に気にも留めない、何気ない日常が、そのちっぽけな瞬間が、みんながサッカーに没頭している姿が、ぼくにとってはマリア様のようだった。

それは大袈裟だと、みんなは思うかもしれないけれど、みんなの存在がぼくにとっての原動力なんです。みんながいるから頑張れるんです。みんながいないとダメなんです。

暇人暇人と揶揄されますが、それを見るために、ぼくはグラウンドによく出没するんです。

グラウンドには、やっぱり色々な発見があります。宝物が、夢がいっぱい落ちています。日常の中で見つけたぼくの宝物を少しだけ紹介させてください。

Iリーグも終わり、C1、C2、C3チームで行われるKGリーグも終わり、インカレだけとなった11月後半のある日。練習が終わった後も、いつもと変わらず黙々と自主練に励む選手がいた。C3チームのキャプテン伊瀬竜一である。

C2、C3チームはIリーグに出場できない。その中でも文句一つ言わず努力を続けてきた。チームを引っ張ってきた。少しでも1ミリでもサッカーが上手くなるために努力を続ける。
ああ、なんて輝いて見えるんだろう。

こちらも、IリーグもKGリーグも終わった、C1チームのコンダクター西田健人。残すはインカレとなった時期にも、C1チームの4回生がサッカーから心が離れないように、少しでもサッカーが上手くなるために、どうすればいいかを、考え続けていた。自分だってすごくしんどくて、悔しいはずなのに。
ああ、なんて輝いて見えるんだろう。

もっともっと宝物はあるのですが、長くなってしまうので、ぼくの宝物紹介はここまでにしたいと思います。

そして、いつも多大なる責任と、期待と、プレッシャーに煽られながら、闘うAチームのみんな。毎試合毎試合、187人の想いを背負って闘うことは本当にキツい。だけど、それがAチームなんだよな。 そしてみんなにはそれをやりきる力がある。楽しむことすらできる。だって、みんなはおれの誇りだから。

でも、キツくなったらスタンドに仲間がいるよ。ベンチには、おれが座っているよ。
ね、みんなとなら大丈夫。

おれらにしかできないことがある。それをみんなで成し遂げよう。そして思いっきりサッカーを楽しもう。今に没頭しよう。共に闘う人たちと。

さあ、またみんなで走ろうか。

男子チーム4回生山口嵩弘

(この文章は法政大学戦前に書かれ、本日投稿予定だったものです)


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