2019-3-17
「奪還」(竹本将太)
「なぜサッカーをしているのか」
関学サッカー部に所属していると嫌でも考えさせられる。
入部したての頃、どう組織に貢献するか、自分の存在意義とは何かを必死で考えるこの組織に衝撃を受けた。
入部前、関学サッカー部に入る決断をした時、お前が試合に出れるわけがないと散々言われた。間違いない。当時、県2部を戦っていた高校出身で(現在3部)、3年になるまでAチームに上がることさえできなかったのだから。自分自身、自信があったわけではない。4年間Cチームかもしれないとか、そいうことは考えないようにしていた。考えたら悪いイメージしか浮かばなかったからだ。そんな中でもここに来ることを決めたのは、当時、関学サッカー部が4冠を成し遂げたから。プロサッカー選手になりたいという夢を叶えるために、大学サッカーを経てのプロ入りは中学時代から思い描いていたビジョンだ。
「なぜサッカーをしているのか」
プロサッカー選手になるという夢を叶えるため。
1年の時、最初はCチームにいて、案の定試合に出れずにいた。あまりに通用せずに真っ暗な上ヶ原を泣きながら走ったこともあった。結局シーズン最後はBチームの全国大会のスタンドでビデオを撮る係。準決勝で負けた。スタメンで出てた同期にそろそろ泣き止めと言ったら、この気持ちはお前にはわからないだろうと言われて自分が情けなさすぎて虚しかった。そのまま実家に帰った時、ベンチ外でビデオを撮るために宿泊代を払わせてしまったことが申し訳なく、両親にどんな顔を向ければいいのかわからなかった。それでもサッカーは辞めなかった。
「なぜサッカーをしているのか」
他にやることがないから。
2年になると運良くAチームに上がることができた。やっときたチャンス。必ずモノにすると思った矢先、骨折。 2ヶ月ぐらいでようやく治って復帰したら、その週に初先発。しかし、自分のところから幾度となくピンチをつくられる。初戦と次の試合に出て、その大会の決勝にはスタンドで応援に回っていた。流石に辞めようと部屋の片隅で泣きまくったが、結局練習に戻り、ガムシャラにやってなんとか後期からフル出場できた。
しかし、チームはインカレ出場を逃す。「なぜサッカーをしているのか」今年の悔しさを来年晴らすため。
3年になり、コンダクターになるためサッカーをやめる選択をした同期がいた。学年ミーティングを重ねるうちに、本気でなぜサッカーをしているのか、どう貢献するかを考えるようになった。チームメイトと深い話をするようになって、一層責任感が強まった分、自分のせいで失点するとより悔しく、申し訳なかった。
勝ち点1差で優勝を逃したリーグも、総理大臣杯を逃した関西選手権も、前日練習で怪我をするという情けなさすぎたインカレも、満足いくことは何もなかった。2年の悔しさを晴らすつもりが、さらに悔しい年になった。しかし、秋頃に自分が主将をすることが決まり、もはやこのサッカー人生は自分のものだけでは ないように思えてきた。ビジョンを考える過程で同期の熱い想いを目の当たりにした。インカレ初戦の応援のまとまりや下級生も必死になって声を出す姿に感動した。
そして遂にラストイヤーを迎えた。このくそったれなサッカー人生を捨てずにやってこれたのは、他でもない、支えてくれるみんなのおかげだ。自分一人ならとっくに辞めていた。下のカテゴリーでも、大怪我をしても、プレーヤーを辞めても、試合に出れなくても、もがきながら前に進む仲間がいるから、竹本将太はサッカーをしている。主将でいられる。本当に日本一になりたい。関学サッカー部全員で泣いて喜びたい。顔をぐちゃぐちゃにして、嬉しいのに涙が止まらなくて、これでもかと抱き合って、最後は笑いあって終わりたい。
「なぜサッカーをしているのか」
日本一になって、全員でその喜びを感じたいから。
だからサッカーをしている。だから主将をしている。
関学サッカー部は今年、日本一になる。
男子チーム 4回生 竹本将太