部員ブログ

2021-3-26
問うな。問われろ。(中井一尭)

 高校3年の冬、憧れた全国の舞台において0-3で惨敗した直後、私は大学でサッカーを続けることを決意した。

 こんな強いチームがあるのかと驚いた。「もっと知りたい、もっと闘いたい。その中で一番になってみたい。」そんな想いで関西学院大学体育会サッカー部の門を叩いた。

 しかし、待ち受けていたのは想像を遥かに上回る環境だった。「一生懸命頑張る。」その程度では到底追いつけない力の差を先輩・同期に見せつけられた。

 それからは毎日が小さな劣等感の積み重ねだった。昨日まで隣でプレーしていた選手が上のカテゴリーに上がっていく。同じ高校から入部した同期は自分が出場できない試合に出場している。「自分は何をしているんだ」と。小さな小さな劣等感を諸所に感じながら、みんなに追いつく為に一生懸命に日々を過ごしていた。

 そんな私も2回生に進級し、サッカー部内での自分の立場がどのようなものか見えてくる時期に差し掛かっていた。そして、冬に※コンダクターmtが始まったのである。

※コンダクターmtとはコンダクターと呼ばれる学生スタッフを選出するmtであり。コンダクターに就任する人は選手を辞め、コンダクター業に専念する。関学サッカー部には2年生から3年生に進級する時に、学年からコンダクターを複数人選出するという決まり?がある。

 コンダクターmtは順調には進まなかった。当たり前だ。みんなサッカーをやりにこの環境を選んでいる。では、どうするのか。同期の中でコンダクターになって欲しい人を推薦をするのである。(この推薦に強制力はない。)

 私はmtにおいて、選手を続けたいという意思を伝えていたが、同期約50人の内、20人をこえる人から推薦を受けた。推薦の手紙の束を渡された瞬間、心臓の鼓動が速くなった。昼休みの寮食堂で必死に涙をこらえ、笑顔を作った。

 人生で一番苦しく、悔しかった。選手としてのお前の力はこのチームに必要ないと。そう突き放された気持ちになった。(今となっては、信頼してくれてありがとうと感じている。)こんなに頑張ってもまだ足りないか。目の前が真っ暗になった。

そんな時、ふと考える。
「なぜ自分がこんなに苦しい想いをしなければならいのか?」
色々なことが頭を巡った。

 私は選手か、コンダクターか、すぐに決断することができなかった。理由は簡単だ。覚悟がなかったからだ。同期の期待を裏切ってまで選手を続ける覚悟も、14年間続けてきたサッカーを辞めて、コンダクターになる覚悟も私にはなかったのである。

 そんな中、親友の1人がサッカー部を退部した。詳細は割愛するが、彼は自分の人生を生きたいと語ってくれた。それが、周りから非難されることであっても、厳しい道のりであっても。そんな彼がとてもカッコ良く見えた。

 私は彼の背中を見て覚悟を決めた。私の中に、選んだ道を無理矢理にでも正解にするという覚悟が芽生えたのである。私は選手という道を選び、必ずその道を正解にする覚悟を持ち、残りの期間を過ごすことを決断した。

 それからの日々は、葛藤の連続だった。時には、チーム為に自分は間違った決断をしてしまったのではないかと考える日もあった。それでも、選手を続けながら、少しでもチームの為になればと、1選手としての枠を越えた活動にチャレンジすることで乗り越えてきた。

 そして、今。あれから約1年が経過し私は副将に就任した。あの決断が正解であったかはまだわからない。そもそも、どうなれば正解かもわからない。だが、私の中にコンダクターへの推薦を断った小さな罪悪感が心の中に残っていることは確かである。

 だが、あの時と違うことが1つだけある。それは4回生になり、恐れ多いがサッカー部に与えてもらう立場から与える側の立場になったということである。

 何かをこのサッカー部に残す為には、コンダクターmtの時のように、問うのではなく、問われないといけない。

苦しい状況下で
「なぜこんなに苦しい想いをしなければならないのか?」と考えるのではなく「この苦しい状況は私にどう振る舞うことを求めているのか。」と考えたい。

 今、私の中にある小さな罪悪感は、私に今どう振る舞うことを求めているのか。

それは、私がサッカーをすることを認めてくれた同期に対して感謝の気持ちを持つこと。
それは、誰よりも貪欲に選手として目の前の課題に拘りを持って取り組み続けること。
それは、苦しい想いをしている人も含めて全員で日本一を目指せるチームを作ることである。

 私はその覚悟を持ち、ラスト1年全員でビジョン「俺が原動力。」と目標「日本一」を必ず体現できるよう、全身全霊をかけていく。

 そして、このチームを離れる時、胸を張って「正解だった。」と私は言いたい。


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