2016-2-24
エピソード2(高橋 諒)
2016年1月29日、私は現役をやめてコンダクターになった。コンダクターになるにあたって自分の人生を振り返り自分でも驚くぐらいに悩んだ。それはそうだ。6歳からサッカーをはじめて15年間ほとんどの時間をサッカーに捧げてきた。初めて本気で目指した夢もプロサッカー選手だった。サッカーは自分の人生そのものだった。サッカーを中心に生活をし、進路もサッカーを第一に考えて決断してきた。一言では表しきれないほど自分にとってサッカーという存在が大きいものであったと、現役をやめるかもしれないと悩んだときに改めて痛感した。
自分は現役を引退することに躊躇していた。一人のプレイヤーとして日本一のピッチに立ったわけでもなく、Iリーグ全国制覇という結果を残せたわけでもない。中学、高校だって自分の満足いく結果なんて残せていない。そもそも大学サッカーをはじめるときもピッチに立っている自分しか想像していなかった。現役としてのサッカー人生に未練があったのだ。また、今まで自分のサッカーを支えてきてくれた両親をはじめとする、多くの方々に対して大学サッカーラストイヤーで泥臭くても、たとえトップで試合に出場できなくて下のカテゴリーだとしても、ピッチに立ちサッカーで感謝を表現することが一番の恩返しになると考えていたし、サッカー人生で結果を残せていないことも申し訳なく思った。こんなことを考えながら決断するまでの期間を過ごしていた。
コンダクターを決めるにあたって何度も学年ミーティングを重ね、毎日のように頭を悩ませた。みんなやっぱりサッカーが大好きで、サッカーを続けたいというのが全員の意見であった。ましてや人生の中で真剣にサッカーができるのは最後かもしれないとなったらそれはそうなるだろう、みんな同じ考えだろうと思った。もちろん自分もその一人であった。
しかし、それよりも大事なことは四冠をとった去年のチーム以上に結果、内容ともに上回ること、大学生はこれだけすごいことが出来るということを証明することだと思った。それについて考えることが関学サッカー部に在籍しているうえでの責任だと感じた。
そのために自分がやるべきことはなにかを考えた。関学サッカー部は「大学サッカーの正当性を証明する」という柱のもとに、
・人間的成長を遂げ学生サッカーの可能性を広げる。
・観る人すべてに感動を与え共有する。
・仲間や支えてくれた人への感謝を体現する。
という目的があり、それらを達成する手段として日本一という目標を掲げている。本気でこの目的、目標を達成するためには自分のすべきことは明確だった。サッカー部には自分よりサッカーが上手い人が何人もいる。そして、その人たちと同等かそれ以上の貢献で関学サッカー部を発展させるためには、チームをマネジメントすることだった。もちろんサッカーで貢献出来ない悔しさや歯がゆさ、むなしさは感じた。
だが、自分のすべきことが分かっているにもかかわらず、勇気もなく黙っているだけの人間にはなにも出来やしない。何もしないことは恐ろしいことだと思ったし、何もしないことに慣れきったらおしまいだと思った。
そして、本気で自分がこのチームを日本一の集団にしたい。去年以上のチームを作りたいと覚悟を持って決断が出来た。また、この決断をしてこれから一年間コンダクターとしてチームに貢献することが、入学した当初は悪がきだった自分をここまで考えさせてくれるようにしてくれた関学サッカー部への恩返しになるとも思った。これが自分と向き合って出した答えであった。
みんなにはもう一度、自分がどのようにしたら関学サッカー部のために動くことができるのか考えてほしい。特にトップチームではない下のカテゴリーに所属している多数の人は、自分が本当に関学サッカー部の一員なのかどうかわからなくなる時があるかもしれない。トップチームが勝っても他人事のようになってしまう時もあるかもしれない。実際かつての自分もそうだった。帰属意識など微塵もなかった。
ただ、そう思ったとしても間違いなく関学サッカー部のエンブレムを背負って戦っている以上は、関学サッカー部の一員なのだ。サッカー部の一員であるからには、自分が組織の中でどういう立ち位置で、その現状を理解したうえで自分の弱さに目を背けずに、自分がチームのためにできる最高のパフォーマンスは何なのか考え続けなければいけない。
関学サッカー部の一員として活動している中で、成長できる機会が至るところに転がっていると最近になってようやく気付けた。だからこそみんなにはもっともっと考えてほしい。必ず今までとは違った次元で、サッカーに向き合えるはずだと自信をもって言える。それがチームのためになるし、結果として自分の成長につながり、自分の存在価値の証明となると信じている。
コンダクターをはじめてもうすぐ一か月が経つが、サッカーって本当に素晴らしいなと感じている。コーチ業というのは初めての経験で模索し壁にぶつかり、苦労もしながら毎日を過ごしているが、新しい視点からサッカーを捉えることで改めてサッカーが楽しくて、さらにサッカーが好きになった。ただ、「高橋諒のサッカー人生第2章」は始まったばかりだ。まだまだこのチームは強くなれる、まだまだ関学サッカー部は成長できると信じてこの一年間やっていきたい。サッカーを通してみんなと成長していきたい。
そして今年、関学サッカー部は大学サッカーの正当性を証明し、世界、日本全体を巻き込む集団になる。地元の友達にも二度と「かんさいがくいん」とは言わせない。そのために出し惜しみはしない。みんな今年一年頑張ろう。
最後に両親には自分の決断を一番に尊重してくれたことに感謝したい。
新4回生 高橋 諒