2016-7-20
決断と決意 (田口 史也)
1月下旬、チームのスタートまでに3回生の中からコンダクターを出すという決断を迫られていた。それまで学年ミーティングを重ね、コンダクターについて、学年について全員で考えていた。
コンダクターは、トレーナー、マネージャー、学生コーチの役割を持ち、チームを支える重要な役職で、プレーヤーとは兼任することができない。だからこそコンダクターになるという決断には勇気がいるし、責任も必要になる。そういう役割だからなかなか立候補する人もおらず、簡単に他人を推すことができなかった。だけど、誰かがやらないといけない。
決められない状況の中、迎えた最後の学年ミーティングで、3人の立候補者が告げられた。その中には、私にとってかけがえのない存在の名があった。石井力という男だ。
石井とは小学生の頃からサッカーを通じての付き合いで、同じ高校に通うようになって、さらに仲は深まった。石井はピッチでもそれ以外でも、チームの中心人物だった。
練習中は一番声を出し、全力プレーでチームに貢献するし、ピッチを出たら、全員を笑いに巻き込む。それが石井のスタイルだった。
石井力は関学に来ても、変わらなかった。
そんな石井が、大切な話があると飯に誘ってきた。なにかと問うと、チームのため、学年のためにコンダクターをやりたいという思いを告げてきたのだ。私はその時、「りきのその気持ちを尊重する。」と言った。しかし、心の中では違った。
「なんでやめるんだよ」
今までずっと一緒にサッカーをしてきた男が、自分がサッカーをするよりも、コンダクターとして自分の能力を活かし、目標達成や、学年に貢献することを選ぶと言ったことが、なかなか受け入れられなかった。
共にボールを追っかけてきて、苦しさも喜びも分かち合ってきたという思いがあるだけに、サッカーをやめることに心から賛成なんてできなかった。
3回生なので、まだ十分サッカーで関学の目標に対して貢献できる可能性はあったはずだ。そう思えて仕方がなかった。
それでも石井力は、自分がコンダクターになって、関学の組織をよりよいものにして、みんなをサポートし、『日本一』になると決断したのだ。
最後のミーティングで、『石井力』の名は告げられた。この時、私は決意した。
『りきの分までサッカーで貢献する』
かけがえのない存在が下した決断を、本当に良かったと思ってもらえるように、いろんな意味で自分の成長した姿をピッチ内外で見せる。りきに「あいつがんばってんな」って思わせられるくらい、プレーと結果で示す。
3回生 田口史也