2016-2-19
目に見えない財産(山内馨介)
去年、関学サッカー部は、関西制覇を二度成し遂げ、日本一に二度輝いた。四冠達成である。
今一度冷静に考えてみてほしい。普通に考えたらあり得ない結果である。しかし、その瞬間は当たり前であるかのように目の前で起こった。とんでもない組織である。その組織の一員であることがいまだに不思議である。
そんな偉業達成の後、私は新チームの副将になった。おそらく納得していない人もいるであろう。なぜなら私はAチームのエースでも、司令塔でも、守備の要でもない、Cチームの選手であるから。はたから見たら、ただ好きなサッカーをやらせてもらっている副将と名の付いただけの選手である。しかし、そうではないということをわかってもらうのと、自分に言い聞かせるということも含めてここに書いていこうと思う。
去年から耳にたこができるほど聞かされている、「チームの日本一にどう貢献するのか」という言葉。
胸を張ってチームに貢献できたといえる人が果たして部員150人の中に何人いるだろうか。おそらくまだ一握りであろう。なんせとんでもない組織であるし、周りから日本一とみられている以上、今の自分の立ち位置、自分が貢献できる範囲というものは、他の人より嫌でも自分が一番わかっているからである。
チームに貢献すると口で言うのは簡単だが実際には難しい。大好きなサッカーで貢献できない歯がゆさ。それを認めたくないがゆえに、その場の評価で感情が左右されてしまう幼稚な自分。何かしなければと思うが、思うだけで結局何もできていない現実。ただ、毎日の練習を全力でやるしかない。こう思っている人がほとんどであったと思う。私も正直その一人であった。自分のことすら満足に肯定できない自分自身がチームの為に何ができるのか。
私の中で出た答えはこうだ。「チームの日本一の為にではなく、日本一のチームにいる自分の為にやる」ということである。
勘違いはしてほしくない。自分の為だけにやってもチームが日本一になれるはずがない。日本一のチームの為にやるからこそ、最終的に自分に返ってくるのである。順番は間違ってはいけない。自分に返ってきたものとは「目に見えない財産」である。
それが何なのかは誰もわからないし、誰も教えてはくれない。だからこそ他の誰でもない自分がやるのだ。自分ができることくらい、自分の為と信じてやろう。
気づいたらそれが「日本一のチームになる為の力」になっているから。頭を働かせ、身体を動かし、誠意をみせるその行動こそがチームへの貢献であるから。
結果として、最後にそれを感じるのがピッチ上であるか、そうでないかの違いだけである。もちろんピッチ上で感じることを誰しもが求めるが、そこは勝負の世界にいる以上、目を背けてはいけない現実である。ただ一つ言えることは、関学サッカー部の正当性を証明することこそが、その「目に見えない財産」を手に入れることのできる唯一の方法なのだということ。
スタッフでもない私が言うのもなんだが、チームや仲間の為に毎日を過ごすのも案外悪くない。自分中心のちっぽけなプライドを捨てるだけで、こんなにも毎日が充実したものになるのかと。これはサッカーの限界を認めたわけではない。もちろん上は目指す。これだけはブレてはいけない。
ただ、自分ではない他の選手が、上のカテゴリーにいくことや、試合で活躍したりする光景を見て嬉しく思ったり、自分が試合に出ていないとしても、今いるカテゴリーのチームが試合に勝ったことを心から喜んだりすることは今までなかった感情である。こう感じているのは自分だけかもしれない。時間が経てばこの感じ方が変わるかもしれない。
しかし、私はその感情を持ちながらサッカーをする毎日が本当に充実している。だからこそやっていない奴には自然と怒るし、やっているのにうまくいっていない奴は助けたいとも思う。色んな人の考えや意見を聞くのがおもしろい。対立したりぶつかったりすることすら楽しいと思える。なによりそんな人達と一緒にサッカーができている自分が好きになれた。この感情を一時的なものでなく、「目に見えない財産」として私は手に入れたい。
自分の評価や立ち位置ばかり気にしていた過去の自分をここまで変えた関学サッカー部という組織は本当にとんでもない組織である。だからこそ私は「関学サッカー部を日本一の組織」にしたい。その一員であると胸を張って言いたい。それを成し遂げるためには150人全員の力が必要不可欠である。貢献の仕方、役割は1人1人違って当然である。みんなも考えてみてほしい。諦めることだけはしないでほしい。チーム(自分)の為だと思ってやることに間違いなどない。
こんな長い部員ブログを最後まで読んでくれた人が少しでもチームの為に考えられるきっかけになってくれたら。関学サッカー部を知らない人に少しでも素晴らしさを伝えることが出来たのであれば。ささいなことだが、これも私なりの一種の貢献の仕方ではないかと思いたい。1人1人の可能性は無限大である。私はチームの底から言い続ける。もう一度みんなで日本一になろう。
話しを戻そう。
私は副将という名だけが付いた選手ではない。副将という名を借りて、自分自身の役割を全うすると心に決めた、日本一のとんでもない組織の一人である。
新4回生 山内馨介