2018-6-20
怪我の功名(谷本一星)
去年の冬、私はサッカー人生で最大の大怪我をした。前十字靭帯断裂である。
この怪我の名称を聞いたことはあったが、まさか自分が怪我するとは思ってもみなかった。医者には、「手術が必要で復帰まで半年以上かかる」と言われた。正直想像もつかなかったし、受け入れることができなかった。しかしそれは現実で、長いリハビリ生活が始まった。
自分の周囲にはこの怪我を経験した人が何人かいて、心配の声をかけてくれた。手術前、手術後のリハビリやモチベーションの保ち方など、経験した人にしかわからないことをすぐに尋ねることができた環境はとても心強かった。そしてなによりもその人たちは、目標にしたいと思うぐらい強い人間で、大きな壁を乗り越えたという確固たる自信を兼ね備えていた。この人たちの存在が、不安に覆われていた自分に勇気を与えてくれた。自分も復帰したら、その経験を自信を持って伝えられるようになりたいと思った。
練習に参加できなくなり、サッカーを当たり前のようにできていた時間がどれほど大切な時間であったのかということに気づいた。怪我をするまではサッカーを毎日しているのが当たり前で、本気でボールを蹴ることが当たり前だと思ってこなしてしまっていた。サッカーから離れて、客観的にこれまでの自分を見つめなおすと、勝手に限界を決めて気づかないうちに、隣の人より頑張っていると思い込んで、高みを目指すことから逃げていたことがわかった。
また、2回生の冬はコンダクターという学生コーチを、自分たちの学年から選出する期間であった。選出のための学年ミーティングを行う期間と怪我が重なっており、選手を諦めてコンダクターになることも考えた。半年以上もプレーできない自分は選手として必要とされるのか。チームの力になることを考えれば、コンダクターの方がいち早く活動が可能であるし、貢献できるのではないか。コンダクターになれば、選手のままでは感じることのできないものがあるだろうし、これまでの経験を指導者として伝えていくこともできる。自分にとってとてもプラスのことであると思った。
しかし、ミーティングを重ねるにつれてその考え方に違和感を覚えるようになった。自分の気持ちに嘘をついているように感じた。長いリハビリでサッカーができない時間が多かったとしても自分の成長を考えた時、この怪我は向き合うべきものであり、乗り越えるためにあるように思えた。怪我のせいにすることは簡単で、諦めることもできた。だがここで諦めず真摯にリハビリに取り組み、前よりも強い自分で帰って来る。それは自分にとって、とても自信になり絶対に成長できると確信した。
私は、ポジティブに物事をとらえる人間だ。だからこそ、この怪我に関してもみんなには経験できないものだと捉えている。
「怪我の功名」という言葉がある。この言葉通り、振り返った時に、「この怪我をしたからこそ良い結果が生まれた」といえるようにする。そして怪我をする前よりも強い自分になって復帰するという目標を達成するために、今を頑張る必要がある。
大学サッカーを終えた時、怪我があったから成長できたと言えるために。
男子チーム3回生 谷本一星