2018-7-4
何かを背負うということ (林孝根)
テレビや雑誌などで、「ワールドカップは国を背負って戦うもの」という表現を目にすることがある。私はその表現が大袈裟だと少し前まで思っていた。しかし、それは決して間違いではないと実感する出来事があった。
先日私は、CONIFAワールドフットボールカップに在日コリアンの代表として参加させて頂いた。これはもうひとつのワールドカップと呼ばれ、サッカーの世界一を決める大会である。CONIFAとは、FIFAに加盟できない国や民族の人達が、サッカーを通して様々な文化にふれあい、繋がることを目的にしている連盟である。
この大会には様々な民族が参加しており、普段一緒にサッカーをしていない在日コリアンの人達と試合をすることができた。非常に良い経験をさせてもらったと思っている。
対戦するどのチームも1つのシュートや1つの競り合い、スライディングまで、自分達の民族のために身を削って戦っていた。
そんな中、在日コリアン代表の若手選手は気持ちのこもったプレーができないでいた。第2戦が終わり、みんながロッカールームに集められた。そこで監督の安英学(アンヨンハ)さんが、「お前達は何を背負って戦っているんだ!」、「何のためにここで、在日コリアン代表としてサッカーをしているんだ!」と若手選手に怒号を飛ばした。安英学さんは、朝鮮民主主義人民共和国代表として、FIFAワールドカップ予選を戦い、44年振りに本戦出場を決め、本戦でもプレー経験がある在日コリアンサッカー界ではレジェンドとされている方だ。私は安英学さんの一言で、国や民族を背負って戦うのは、軽々しいものではないと身に染みて感じることが出来た。
それからというもの、若手選手のプレーが見違えるようになり、観客の人達から素晴らしかったと賞賛をもらった。
優勝することが出来なくて非常に残念だったが、結果よりも「何かを背負うということ」について学べ、考えられたので本当に良かったと思う。
この大会を通して、思いを背負い、代表として試合に出るのは決して簡単ではなく、自分の全てをかけて戦わないといけないということを学んだ。
そして次は、関学サッカー部の思いを背負って戦うことになる。試合に出たくても出られない選手や公式戦がない中、毎日きつい練習を乗り越える仲間や、自分のことのように勝利を喜んだり、負けを悔しがってくれる仲間の思いを背負って戦いたい。
関学サッカー部は今年100周年を迎え、これまで様々な方々に支えられ成り立っている。また現在も、支えてくださっているOBの方々の思いを背負って戦わないといけない。これらの人達の思いを背負い、身を削り戦う。それがその人達の原動力になると思う。そして何としても、今年は日本一になって笑って終わりたい。そのためにも身を削り全ての思いを背負い戦いたい。
男子チーム4回生 林孝根